F・C(ファーマーズクラブ)赤とんぼ 訪問視察、塩水選作業体験報告②(2018年3月24日)
生活クラブ生協大阪の米沢米とラ・フランスやさくらんぼの生産者団体であるF・C赤とんぼと米沢郷牧場。地域を挙げて循環型農業に取り組み、若い生産者が就農しています。無農薬米にも取り組む技術力の高さ、米や果物のおいしさ、地域を挙げて環境を守る農業を行っていることは、会員の皆さんが同じ志を持っているからこそだと感じていました。今回、農薬を減らす作り方のための塩水選や温湯消毒を体験する機会に恵まれましたので、ご報告します。
2泊3日かけての訪問体験の2日目です。
理事長 浅井由起子
○3月24日(土)
8時 米沢郷牧場加工場(高畠町)にて、塩水選、温湯処理作業。
レポート【塩水選、温湯消毒】
私たち生活クラブ生協の組合員は、自分や家族の健康を考えて安全な食べ物を食べたいと願っています。安全な作り方の食べ物を利用することは、自分の健康のみならず、環境負荷の少ない生産方法により産地の環境を守ることにつながります。また国産自給率を高めていくことになり、他国から食や水、栄養分を奪わなくて済みます。年に一回しか収穫のない米は、生産者と約束した契約量を、新米が収穫されるまでに「登録」という形で食べきることが大切です。赤とんぼでは、私たちの、「安全でおいしい米が食べたい」という願いをかなえるために、農薬や化学肥料を減らして栽培しています。具体的には、植えるイネの空間を空けて風通しを良くすることで薬剤に頼らずに病気を防ぎます。そのためにはたくさん実をつけ、病気になりにくい苗を選ばなければなりません。そのような苗を植えるために、よりよい種子を「塩水選」という方法で選別し、病原菌を「温湯消毒」という方法で死滅させます。一般の農法では、殺菌剤で一瞬にして終わらせることができるこの作業を、一日かけて体験しました。
「塩水選」は、比重1.16(塩水濃度は19%)という高い塩水比重の中に種子を入れます。中身が詰まったしっかりした種子は下に沈むので、上に浮いた種子を網杓子ですくいます。(すくった種子は植えてもあまり実がつかないので、鶏の飼料にします)塩水を口に含んでみましたが、海水よりも濃い濃度で、水を飲まずにはいられないほどでした。着ていたカッパは時間がたつと塩水が乾いて真っ白になります。沈んだ良い種子は真水で3回洗ってから、袋に入れて「温湯消毒」を行います。60℃のお湯のプールの中に袋ごと入れて、袋の中で種子を泳がせるように揉んで5分間洗います。このようにして農薬を使わないで殺菌するのです。60℃のお湯に5分間は、想像するより熱くてつらく、軍手の上から肘まであるゴム手袋をつけて作業しますが、手がひりひりします。私は大丈夫でしたが、同行の男性三人はみな指がやけど状態になっていて驚きました。日ごろ炊事でお湯を触ることが多い私の手だから大丈夫だったのかな、と思っています。温湯消毒後の種子は発芽率の低下を防ぐために氷水で3分間冷やします。18年度産の米の出来に関わるかと思うと作業に力が入ります。その後は、最初にミネラルを含んだ良い水を吸収させるために、BMW活性水の入った水に袋ごと漬けておき、育苗箱に撒かれる時を待つのです。
このような作業を何人で行うのか?によって所要時間は変わりますが、今回は12人程度で、8時からスタートして、終了は16時でした。慣行栽培では種子は購入してくることが多いということで消毒は薬剤を使って済ませてあります。もしくは薬剤を使わないならば「送風選別」がほとんどだそうです。この赤とんぼのやり方は、塩水濃度、お湯の温度、袋に入れる種子の量、冷水にさらす時間、など今までの20年余り試行錯誤で編み出してきた種子選別です。最初のころは失敗して全く発芽しなくて、慌てて塩水選からやり直し、ぎりぎり間に合ったこともある、とお話ししてくださり、「薬剤を減らす」ための並々ならない努力がしのばれました。私たちの「安全なものが食べたい」という願いと、「安全なものを作りたい」という生産者とのめぐり逢いがあり、手にすることができている幸せをかみしめました。
政府は「減反政策の廃止」など小規模農家よりも大規模な農業が経営しやすいように進めていっています。しかし大規模農家が薬剤を減らすためにこのような時間のかかる作業を行うのだろうか?と疑問がわいてきました。そんなことをしていては、定植時期に間に合いませんし間に合わせるならば、人件費がかかってしまいます。この作業をしないということはすなわち環境汚染につながる農業をしていることになります。私たちが「安全な食」を求めるならば、効率を追求しなければならないような大規模農業の形態はそぐわないと思いました。赤とんぼでは栽培面積の狭い農家が多いために、塩水選は自宅で行い、共同で運営しているこの場所では順番を決めて温湯消毒を行っているそうです。小規模農家が集まっているからこそできる取り組みなのだと思いました。
18時半 赤とんぼ生産者、スタッフとの懇親会
報告③に続く