「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の「中間まとめ」に対するパブリックコメントを提出しました
1.(p3~7)ベースロード電源市場の創設
・ ベースロード電源市場は、原発や火力を推進することが目的に見えます。また託送料を値上げした分、こうした市場をつくる安い原発の電気を新電力にも買わせてやるという姿勢です。しかし、原発を拒否している新電力利用者にとっては、原発がミックスされている市場の創設は意味がありません。一方でベースロード電源の確保は必要であることから、この市場で石炭火力、原発、大型水力など電源別にわけて購入できるようにすべきです。
・廃炉・賠償で発生する多額の費用について「例外的に」託送料金を使い、原発を拒否している新電力利用者を含む全需要家に負担を強いる一方で、原発由来の電気を安く購入できるようにする、というのは明らかな矛盾があります。原発由来の電気をベースロード電源市場に供出するのであれば、廃炉・賠償で想定される費用を含めた価格で出されるべきです。そうすることなく「原発の電気は安価」とすることに納得できません。
2.(p17~21)原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方
・託送料に原発の廃炉費用および事故損害の賠償費用を上乗せすることは、原発を持つ電力会社の負担を軽くすることであり、結果的に原発の優遇策であり、推進策であり反対します。
・託送料に費用が上乗せされた場合は、新電力の負担となり、事業を圧迫し、公正な競争が行われなくなる可能性があり電力自由化の理念に反します。
・この間、廃炉費用は発電事業者の責任で積み立てきており、今後もそのようにすべきです。廃炉に必要な費用は、原発を所有している電力会社とその利用者が負担することが基本であると考えます。廃炉に必要な費用を確保できなければ、売電価格に反映し原発による電気の利用者が負担するべきと考えます。
・送電網は、社会的なインフラでありその利用・運用は公正・中立でなければなりません。大手電力会社のために、廃炉費用など直接送電に関係ない費用を計上すべきではありません。あわせて送電線の公正・中立的な運用を確保するためにその料金の内訳などを公開するなどして透明性を高めていくことを求めます。
・原子力発電に大きな費用がかかるのならば、原子力を推進する2014年4月策定の「エネルギー基本計画」を見直し、再生可能エネルギーの拡大を目指すべきです。
・全需要家から公平に回収する「過去分」の上限は2.4兆円とされ、「今後、変動が生じる性格のものではない」とされています。一方で、p17の注釈15において、欧米で検討されているストランディッドコストに類する費用が明らかになった場合、その都度、対応の必要性を検討するべき、とされています。これを素直に解釈すると、今後も回収が必要となる費用の発生、もしくは増額が分かった場合、託送料金を使って回収されるもの、つまり、需要家(消費者)が負担するものが増える、と思われます。今後も託送料金を使う余地があると考えられます。今回に限らず、直接送電に関係ない費用を託送料金に含めることに改めて反対します。
・「過去分」について、料金明細票等に明記することを求めていく、とされています。料金の詳細な内訳を開示するのは事業者が果たすべき義務であり、この点は評価できます。ただ、一方で、それ以外のものについて、明記を求めていないことに矛盾を感じます。電気に関わる各事業者(発電・送配電・小売)すべてに対して、原発に関連する他の費用など電気料金の内訳詳細に明示するように求めるべきです。
・「託送料金に含まれる内訳により、需要家の電源選択が妨げることはない」とされています。しかし、届いている電気が何由来なのか、すなわち電源の表示が義務とされていない現状では今回の件とは関係なく電源選択が妨げられています。電源表示を義務化することこそが、消費者の要望に応えるものです。
3.全体を通して
今回、「過去に安価な電気を等しく利用してきた」ことを理由に、原発から縁を切ることを決めた人たちに対しても、「全需要家が等しく受益してきた過去分について、全ての需要家が公平に負担することが適当」として、託送料金を使った回収をする、とされています。
回収は2020年から40年とされています。果たして「過去分」とされている2011年以前に電気を使っていた人が、この40年の間にどれだけこの費用を払うことができるのでしょうか。この仕組みが適用された場合、結局、大部分は2011年以前には「受益」していなかった次やその次の世代が負担することになります。例えば、2020年に生まれた子供は全く「受益」していなかったことについて「負担」のみを負わされることになります。
このことについて、子どもたちにどう説明していけばいいのでしょうか。とても納得のできる説明はできません。
今回提言されている「過去分」を託送料金で、というのは、将来の世代に「つけ」を回す仕組みです。
将来にツケを回すのではなく、廃炉・賠償といった原発に関わる費用は原子力事業者とその電気を使うことを選択した人たちが負担することが筋です。
改めて、託送料に原発の廃炉費用および事故損害の賠償費用を上乗せすることに強く反対します。
以上